皆さんこんにちは、市場で働くそういちろうです。
皆さん、マグロ食べてますか?美味しいですよね。マグロ。お刺身でもお寿司でもマグロは欠かせませんね。
さて、皆さん大好きなマグロですが、大トロ・中トロ・赤身ってマグロのどの部分を食べているか分かりますか?
今回は意外と知らないマグロの部位について調べてみました!
ということで、いきなり正解の図です。マグロの大トロ・中トロ・赤身ってどこの部位か分かりました?
これじゃ分かりませんよね。
そうなんです、マグロは立体ですから平面図だとなかなかマグロの部位って分かりづらいんです。
こうなったらマグロのプロに聞きに行くしかありません。
そこで、早速、マグロならプロに聞け!築地市場のマグロ屋 大宗に聞きに行きました。
この日は2018年10月5日で、なんと!築地市場が閉場する前日でした。大変お忙しい中、マグロのプロ井辻さんに話を聞きます。
真剣にマグロをサク取りしている井辻氏。マグロを愛し、マグロに愛された男。全身からマグロのプロ感が醸し出されています。
ついでに言えば、猫に好かれそうです。
仕事の手をとめて、私のマグロ部位の質問に答えてくれました。優しいっ。
マグロの部位を調べるなら、まずは競り場からマグロを追いかけます。
5時過ぎから始まるマグロの競りにあわせて、冷凍マグロが並べられています。カッチカチやぞ。
マグロに近づいてみると、エラの下にぽっかりと穴が空いています。これは水揚げした後に、内蔵をとってから冷凍してあるんですね。
(内蔵は劣化しやすいので、鮮度が重要なマグロだとまず最初に処理されます。)
尻尾の方は輪切りにされています。運搬用に紐がかけてある尻尾の先を切り落として、競りの下付け(調査)用に断面をみせています。
紐がついたほうは、尾の身になります。
マグロの競りでは1尾づつ競りにかけられて、高値を付けた仲買人に競り落とされます。
丸々一匹のマグロがいよいよ解体されて部位に分かれるスタート地点です。
競り落とされたマグロ達は、ターレや小車に引かれて店までやってきます。丸くて脂っぽくて凍っている、滑りやすいマグロを慎重に運びます。
何十キロもあるマグロを足にでも落としたら、怪我をします。冷凍マグロを扱っている人の多くは、安全靴を履いています。
まず最初に大型のバンドソー(のこぎり)で、一尾のマグロを4つに割ります。写真は背側を1/4にしているところ。
実はマグロは微妙に曲がった状態で冷凍されています。寝かせた状態で凍らせますので、背骨が曲がるんですね。
そこで、バンドソーで四つ割りにするときには、背骨に合わせるようにマグロを左右に振って切っています。真っ直ぐに切っているわけではないんですね。
マグロを四つ割りにすると、お腹側が2つと背側が2つになります。写真は腹です。内蔵をとってあるので、四つ割りにするとお腹のところは空洞になってます。
腹側からは大トロ・中トロ・赤身がとれます。
ちなみにこのマグロはミナミマグロ(インドマグロ)です。魚体だと50キロ前後のマグロです。
こちらは、背側です。背からは中トロと赤身がとれます。
四つ割りの状態だと、どこが中トロなのか赤身なのかは分かりませんね。(私も最初はそうでした)
四つ割りにしてから、背をスライスしてマグロの品質を調べます。競りでは断面図がありませんから経験と勘でマグロを競り落としますが、断面を溶かしてみることでさらにマグロの品質を見極めます。
それでは、マグロの背に戻ってサク取りを開始します。サクの長さは使う人によってマチマチです。右手に持つ定規に合わせて、狙ったサクの長さに切ります。
マグロの背に、一回バンドソーを通した状態です。
マグロの背の断面です。銀杏(イチョウ)の葉の形をしてますね。
イチョウの中心の方(写真の上)がマグロの赤身となり、皮側(写真の下)が中トロとなります。皮ぎしに脂がのります。
寒い海で泳いでいるマグロは、脂を身の外側にまとうことによって、体の中心を守っています。
それでは、マグロの赤身をサク取りしていきます。上側を切る(天をはねる)という意味で、この作業はマグロの天ぱねと言われています。
天ぱねされた部位が赤身となります。またはその作業から、天ぱねといいます。この部分は体の中心に近く、筋がありません。極上のマグロの赤身となります。
次に、天ぱねされて残された部位を、その形状から「瓦(かわら)」と呼びます。見たとおり、屋根の瓦に形がそっくりですね。
そして、マグロの瓦から血合いや筋を丁寧に取り除きます。
血合いや筋などの不要な部分を取り除いてから、中トロのサク取りになります。
サクの厚みも料理人の好みがあります。一般的には親指の幅くらいでしょうか。
次にマグロの腹を加工します。内蔵の空洞部分がマグロ大トロが取れる場所になります。
これが、切り落とした大トロの部分です。
マグロの腹の断面です。ここから、背と同じように赤身部分を切り落とします。
サク取りしたマグロは丁寧に保管します。加工したてではマグロは出荷しません。一度この状態でマイナス50度でさらに凍らせてから出荷します。
サク取りされたマグロの部位です。最も整ったサクは中トロです。瓦からサクを取るのが一番きれいに取れます。
真ん中が、赤身。天ぱねの部分は三角形なので多少サクの形が乱れます。
一番右が大トロ。腹の部分ですので、筋があって形も一定ではありません。
そういえば昔、筋のない大トロくださいってお客さんに言われて、のけぞったことがあります。大トロは腹の部分ですので、筋は必ずあります。
マグロは赤身・中トロ・大トロだけではありません。
マグロの頭からは頬肉がとれます。冷凍マグロの頬肉は加熱用ですが、まるでお肉のような食感です。
頬肉はマグロの口を動かす筋肉ですから、弾力があるんです。
また、頭からは頭肉が2本とれます。これはお刺身で食べられるところ、マグロの脳天や鉢の身などと呼ばれています。
競り場で切断された尻尾は、お店で輪切りにされてマグロの尾の身として売り出されます。冷凍マグロの尾の身は加熱用で、焼いたり煮たりして食べます。
尻尾を動かす腱の部分を加熱するとブリンブリンになり説明し難い食感となります。
マグロから全ての過食部分をとった残りがこちら。マグロさん、ありがとう。無駄なく全身を食べます。
市場では専門にマグロの廃棄部分を収集する業者さんがいます。飼料になるようですが、噂では化粧品のもとにもなるようです。(マグロのコラーゲンかな?)
マグロをサク取りすると、これだけの切り粉がでます。これは食べられませんので、頭や骨と一緒に廃棄します。
バンドソーを入れれば入れるほど、マグロの歩留まりが悪くなります。
・大トロ
・中トロ
・赤身(天ぱね)
・カマ
・頬肉
・頭肉(脳天、鉢の身)
・尾の身
ご覧いただいたように、マグロは大変な手間をかけてそれぞれの部位に分けられています。意外と手間がかかっているでしょう!?
もし行きつけのお寿司屋さんがあったら、「天パネ」や「皮ぎしの旨い中トロ」を握ってくれいとリクエストしてみましょう。
(あまりやり過ぎると嫌われます、笑。)
マグロの流通にかけるプロの仕事人が、目利きから解体まで責任をもって作業しています。
このことをちょっと思い出してもらえれば、マグロに関わる仕事をしている私達も幸せな気持ちになります。
それでは今日はここまで!またお会いしましょう。