築地の仲卸「鈴千代」産に並ぶ色とりどりの貝。産地によって色、模様、形、どれもちがいます。アサリについて、鈴千代の社長・長野さんに教えていただきました。
シノブ
アサリってこれだけ種類があるのですね。
長野さん
そうですね、産地、大きさと、いろいろあります。
シノブ
今も東京湾でアサリって獲れるのですか?
長野さん
東京湾のアサリ、いわゆる「江戸前」のアサリは、今すごく数が少ない。出回っているアサリのほとんどは、中国からの輸入モノが多いと思いますよ。
シノブ
割合的にはどのくらいなのですか?
長野さん
築地で扱っているアサリの9割くらいが中国産で、江戸前の地物は1割にも満たないくらいじゃないかなあ。
シノブ
江戸前のアサリは希少なのですね。中国産以外のアサリってあるのですか?
長野さん
北海道、熊本、三重、千葉のものなどありますよ。
シノブ
それにしても、見比べると、アサリって産地によって、見た目がぜんぜんちがうのですね。
江戸前とは?2004年に水産庁がつくった『豊かな東京湾再生検討委員会食文化分科会』において、どこの漁場で獲れたものを「江戸前」とするか議論がかわされ、06年に分科会がまとめた報告書では、「東京湾全体でとれた新鮮な魚介類を指す」と定義づけた。 |
長野さん
産地によってぜんぜんちがいますね。
シノブ
中国産は少し大きめで、色の境目が曖昧なような色味。北海道産は、グレーがかっていて、模様がすくない感じで。千葉の、これは小ぶりな感じだけど、白と黒のコントラストがはっきりしていますね。青みがかっていたり、赤みがかっていたり、ツヤがあったりして色が鮮やかですね。これだけ違うと、きっと味も違うのでしょうね。
長野さん
はい。それぞれちがいますね、ぜんぜん。
シノブ
産地によってどう違うのか、食べ比べてみたらおもしろそうですね。それにしても、これだけの貝を見ていると、食べたくなってきますね(笑)おいしい貝の見分け方って、何かポイントはありますか?
長野さん
とにかく鮮度。生きている活きのいい貝。これに限ります。
シノブ
生きている貝かぁ。活きの良さって、スーパーでは見分けられないですよね…。
長野さん
たしかに難しいかもしれないなあ。パックになったアサリは、鮮度を保つために、パック内の水温を低くしているんですけど、この時、アサリは活動をしていない状態にあるんですね。それと、パックの中は酸素が薄いから徐々に弱っていって口が開いちゃうんですよ。だから、アサリをちょっと触ってみて、アサリを刺激してみて、口が閉まらないものは買わない方がいいですね。
シノブ
口が閉まらないのは死んでいるっていうことなのですか?
長野さん
死んでいる、もしくは弱っているつまり活きがよくないってことです。
シノブ
なるほど、そういうことなのですね。
長野さん
アサリが殻から水管、白い部分が出ている時があると思うんですが、あれをギュって強く刺激すると、アサリは驚いて水管を出したまま口を閉じちゃうことがあるんですね。そうするとアサリは死んでしまうので、刺激を与える時はやわらかめにしてください。
シノブ
ギュウギュウしないで、やさしく、ですね。
長野さん
パックに入っている場合は、軽く揺らしてみて、水管が動くかチェックしてみてください。
シノブ
動かしてみて、どのような状態が良いのですか?
長野さん
泡がたくさん出れば、活きのいいアサリがたくさん入っている証拠です。
シノブ
ちなみに、死んだアサリは食べない方がいいんですよね?
長野さん
はい。生臭くて、おいしくないです。僕、実は、貝があまり得意じゃなくて。磯臭さがニガテで。だから本当に活きのいい貝しか食べないんですよ。
シノブ
たしかに、貝が苦手っていう人は、磯臭くてダメとか、生臭くて…っていう声を聞きますね。でも、新鮮な貝を食べたら、変わるかもしれないですね。砂抜きも面倒とかってよく聞きます。
長野さん
砂抜きの時、塩水は、なめてみてちょっとしょっぱいって感じるくらいでいいですよ。
シノブ
そうなのですね?よく“海水の濃度”とかっていうから、海水の濃度っていわれても..,よくわからない、みたいなところがあります。
長野さん
貝をバットにならべて、貝の頭が少し出るくらいまで塩水を入れます。平らに並べると、よいと思います。
シノブ
平らに並べると良いのはどうしてですか?
長野さん
貝が重なっていると、下にある貝が砂を吸ってしまうことがあります。そうすると、せっかく砂抜きしても抜けきれない。
シノブ
あとは暗い場所で、30分くらい置いていますが…。
長野さん
貝は暗い場所の方がよく砂を吐くので、暗い場所で。6時間くらい動かさずに置いておけばよく吐いてくれるはずですよ。
シノブ
なるほど、ありがとうございます。酒蒸し、お吸い物、味噌汁…、貝を見ていたら食べたくなってきました!早速、帰って魚屋さんに行ってみます。