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西洋でも日本でも文化に根付いた魚・ニシン

1989年に公開された映画「魔女の宅急便」13歳になった主人公のキキが魔女のいない町でひとり立ちをすべく、さまざまな人達と交流を重ねながら成長していくスタジオジブリを代表する作品です。

料理の描写が評判を呼ぶスタジオジブリですが、この作品では一風変わった料理「ニシンのパイ」が登場します。

日本では昆布巻きや煮付けなどの印象がつよいニシンですが、ニシンのパイとはいったいどんな料理なのでしょうか。ニシン料理や文化的な側面とともに紹介していきます。

嫌いと言われてしまったニシンのパイ

主人公のキキが風雨にさらされ苦労をしながらも、おばあさんの作ったニシンのパイを誕生日の孫に配達するものの「私このパイ嫌いなのよね」と言い放たれてしまう。
映画「魔女の宅急便」でも印象的なシーン。このシーンとともに注目されたのがニシンのパイです。日本ではあまりなじみのないニシンのパイはいったいどんな料理なのでしょうか。

ニシンのパイはイギリスの郷土料理として実在をしておりほかにスウェーデンスウェーデンやオランダでも親しまれています。
イギリスではスターゲイザーパイ(星を見上げるパイ)と呼ばれ、作中で登場したものとは少し異なりパイ生地からニシンの頭が飛び出し星を見上げているように見えるためこのように呼ばれています。

味のほうは、作中でも「ニシンとカボチャのパイ」と呼ばれていた通りホワイトクリームとカボチャの甘味の愛称が良く、魚の臭みもない味わいなのだそうです。

ソーラン節とニシン

ここまで西洋の食文化でのニシンを紹介いたしましたが、日本でもニシンはなじみ深い魚のひとつで、北海道の民謡として全国的な知名度を誇る「ソーラン節」はニシン漁を歌っています。

北海道の日本海側は春にニシンが産卵のため押し寄せるため、江戸時代から昭和の初期ごろまでニシン漁が盛んにおこなわれていました。
第一次世界大戦後のころには好景気の後押しもありニシン漁で財を成す者も現れるほどの賑わいを見せていたそうです。

春になると一獲千金を求めて北海道に出稼ぎの漁師が大勢集まり、極寒の中命がけのニシン漁に励んでいたのですが、そのときに士気を上げるため、また結束を高めるかけ声の代わりとして歌われたのがソーラン節でした。

ソーラン節は1980年代に北海道内の荒れた中学校の風紀をただすために踊ったことで知られるようになり、人気ドラマ「3年B組金八先生」で取り上げられたことをきっかけに爆発的に広まり、現在では国内の学校の文化祭や体育祭で広く踊られています。

にしんそばに使われる身欠きニシンって?

関東ではあまりなじみがないかもしれませんが、関西地方ではお馴染みのにしんそば。骨まで柔らかく煮込んだニシンの甘露煮をかけそばにトッピングしたものでニシンの身をほぐすと香りの良いつゆにニシンのうまみが溶け上品な味わいとなります。

にしんそばで使われるニシンは身欠きニシンの甘露煮なのですが、身欠きニシンとは普通のニシンとはどう違うのでしょうか。
身欠きにしんとは、いわゆるニシンの干物のことでニシンの頭と内臓を取り除き日干しして乾燥させたものです。

北海道で獲れたニシンを流通させるために冷蔵庫のない時代の保存方法として考案されたものでした。山に囲まれ海に面していない京都で貴重なたんぱく源となる身欠きニシンを押しく食べる方法としてにしんそばが考案されたようです。

身欠きニシンの名前の由来には二つの説があり、干物にしたニシンを調理のため、戻した際に身がかけやすいことから名付けられたというものと、加工を行う際にニシンの腹側をさばいていたことから「身を欠く」ということで身欠きニシンと呼ばれたというものです。