次から次へとひっきりなしにお客さんが訪れる老舗・漬物専門店「吉岡屋本店」。“本物を売る店”を目指し、初代当主・吉川達次郎氏が探求に探求を重ね作り出した「東京奈良漬」は、誕生から100余年経つ今もなお同店の看板商品であり、根強いファンをもっています。今回は、吉岡屋さんの漬物についてです。
シノブ
漬物がたくさん並んでいますね。全部で何種類くらいあるんですか?
南澤さん
表に並んでいるのでだいたい70種類くらいです。
シノブ
70種類ですか!? そんなに。「表に」と言うと、中にもまだあるのですか?
南澤さん
はい、お店さんなどからご注文をいただいた漬物がお店の冷蔵庫にありますよ。
シノブ
お店というと、飲食店さんですか?
南澤さん
はい。ホテル、旅館、料亭、量販店、鰻店などです。
シノブ
いろんなお客様がいらっしゃるのですね。小売はされていないのですか?
南澤さん
小売もしていますよ。10年くらい前からでしょうか。2割くらいが個人のお客さまです。
シノブ
値札に「100g /000円」と書かれているのが不思議だなあと思ったのですが。築地だとだいたい1kgいくらで表示されていることが多いので。
南澤さん
場内はそうですよね。場外だと個人のお客さまが買いにいらっしゃるので、そういった方向けに100g単位でおわけしています。
シノブ
そういうことだったのですね。プロの料理人の方も直接、買いに来られることもあるのですか?
南澤さん
はい。ここは駐車場がすぐそこにあるでしょ? 場内で魚を買って、帰りがけに漬物を買って帰るという流れで、うちに寄ってくださいますよ。
シノブ
そうなのですね。プロの方が使っている漬物を買えるって嬉しいです。どのあたりの漬物をみなさん買って行かれるんですか?
南澤さん
奈良漬。それと、べったら漬は2トップです。
シノブ
“吉岡屋さんといえば”という2つがやはり人気なのですね。
南澤さん
それと、うちでは1ヶ月に6種の季節の漬物を販売しているのですが、これもよく買って行かれるお客さまは多いですよ。
シノブ
“季節の漬物”とおっしゃいましたが、1ヶ月に6種類も新商品を出しているのですか?
南澤さん
はい。毎月、旬の野菜を使った漬物をご提案しています。
シノブ
それはおもしろいですね。たとえば、どのようなものがありますか?
南澤さん
7月だと、コリンキーやミニトマト、ザーサイ、青高菜の浅漬。それと、ゆず千枚漬、山形のだし。この6つをお出ししていました。
シノブ
コリンキーですか?ミニトマトというのもめずらしいですね。
南澤さん
コリンキーは歯ごたえがあって、あっさりとしていて美味しいですよ。色も黄色で夏らしいでしょ? ミニトマトもさっぱりとしていて美味です。夏にいいですよね。
シノブ
はい、すごく美味しそうです。ザーサイというのは、中国野菜のザーサイですよね?
南澤さん
はい、そうです。新物のザーサイをそのまま浅漬にしています。サラダ感覚で食べられ、とてもサッパリとしていて人気がありますよ。
シノブ
ザーサイの浅漬ってめずらしいですよね。これまたすごく美味しそう。
南澤さん
コリコリと食感もよくて、美味しいですよ。それと6月は、カボチャと生らっきょうの浅漬。はぐら瓜の中をくりぬいて、葉唐辛子にしその葉を巻いたものを挟み込んだ漬物。ゴーヤをレモンで浅漬にしたもの、新玉ねぎの甘酢着けなどをお出ししました。
シノブ
いろんな漬物が次々と登場しますね。月に6つはすごいなあ。
南澤さん
飲食店さんのお客さまが「今月どうしようかな」という時に、今月はこういう漬物がありますよと、ご参考にしていただけるように月替りでオススメを提案しています。
シノブ
漬物で季節を楽しむって素敵ですね。
シノブ
それにしても、これだけの漬物の種類に驚きます。
南澤さん
うちでは全国各地の漬物を取り揃えているので、それだけ種類も多いのかと思います。
シノブ
吉岡屋さんにはバイヤーさんのような方がいるのですか?
南澤さん
いえ、とくにそういうのはいなくて。みんなであちこち漬物を探して歩き回っています。
シノブ
吉岡屋さんのスタッフさんたちでですか?
南澤さん
はい、そうです。この前は千葉の房総の「道の駅」をぐるっとまわってきました。
シノブ
道の駅は地域の特産品が置いてありますよね。全国各地を見てまわって、美味しそうな漬物を探すのですね。
南澤さん
はい、そうです。
シノブ
「お、これは美味しい」という漬物と出会った時はどうするのですか?
南澤さん
味のいいもの、おもしろいものなどは、うちで販売させていただけないかご相談したりしますよ。先日、千葉で出会った漬物が、近々うちの店頭に並びますよ。
シノブ
それはおもしろいですね。ぜひ食べてみたいです。
吉岡屋さんの創業は1910年。初代の吉川達次郎氏は食へのこだわりが人一倍強く、本物を売る店を目指し、美味しいものを全国に探し求め続けたそうです。その初代の探究心は、今もなお、吉岡屋さんに根付いているのでしょう。