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牡蠣のいちばん美味しい時期を知っていますか?

もうすぐ鍋の美味しい時期がやってきますね。牡蠣鍋が待ち遠しい編集部・シノブです。岩牡蠣に真牡蠣と、牡蠣にもいろいろあるけれど、牡蠣にも旬があるにちがいない。築地で貝を中心に扱う仲卸「鈴千代」さんに教えていただきました。



シノブ
鈴千代さんでは貝は何種類くらい扱っているのですか?

長野さん
種類としては20種類くらいです。

シノブ
20種類もあるのですね。

長野さん
種類自体はそのくらいですが、うちの強みは、1種類の貝に対してサイズをたくさん持つようにしています。

シノブ
サイズですか? 貝にもいろいろサイズがあるのですか?

長野さん
メインどころのサイズ、大きめ、小さめといろいろあって、それを何種類もそろえています。

シノブ
サイズをたくさん持つようにしているのはどうしてですか?

長野さん
たとえば、お客さまから「このアサリは大きいから、もっと小さいのが欲しい」って声をいただいた時に、持っていないと何もできないじゃないですか。でも、いろんなサイズのものを持っていれば、お客さまのリクエストにすぐ応えることができますから。

シノブ
なるほど。ハマグリのお吸い物で考えても、料理する人によって、大きめのものを使いたいとか、小さめのものを2つ入れたいとか、ありますもんね。

長野さん
はい、みなさんそれぞれにイメージされているものがありますよね。品ぞろえが多い方が、選べるじゃないですか。自分が思い描いているものを選べる。だからうちは、サイズをいろいろ持つようにしています。

シノブ
そういうことなのですね。鈴千代さんでよく出る貝はどのあたりですか?

長野さん
季節によってちがいますが、アサリや赤貝は年間通してよく出ます。岩牡蠣は春から夏頃までで、そこから真牡蠣に切り替わって、冬から春先にかけては真牡蠣がよく出ますね。牡蠣はうちでは年間30万個くらい出ますよ。

シノブ
へーーっ30万個も売れるのですか!? すごいなあ。
ところで長野さん、牡蠣のいちばん美味しい時期っていつですか?

長野さん
春の牡蠣。これがいちばん旨いですよ。

シノブ
え!? 春ですか?

長野さん
牡蠣は海水のプランクトンを食べて栄養を蓄えているのですが、そのプランクトンが発生するのが春先なんです。

シノブ
なるほど、その時期の牡蠣が美味しいというわけなんですね。

長野さん
春になって山の雪が解けると、山から豊富な植物プランクトンが養殖している海に流れ込みます。栄養分が山から海に流れ込んで、牡蠣はさらに栄養たっぷりのプランクトンを食べて、美味しく育つんです。

シノブ
そういうことなのですね。牡蠣のために植林している養殖業者さんがいると聞いたことがあるのですが、山から育てているということなのですね。

長野さん
はい。川の上流にいい木があると、牡蠣の味は格段に上がるそうですよ。だいたいみなさん牡蠣というと、冬場の鍋が美味しい時期に食べることが多いと思います。だから、市場でも需要が下がる春の時期には牡蠣を扱わないっていうところもあるんですよね。

シノブ
寒い時に、あつあつの牡蠣鍋、たまりません(笑)

長野さん
たしかに美味しいですよね。僕らは逆に、春先の、その時期の牡蠣を自分たちで買って食べますよ。安くて旨い。

シノブ
まさに山と川と海の恵ですね。食べてみたいなあ。牡蠣って、生食用と加熱用とありますけど、どっちの方がいいとかってあるのですか?

長野さん
生食用の牡蠣には、殻付きと剥き身のパックがありますよね。生食用の殻付きの牡蠣は、海から揚げると、洗って泥を落として、1日とか2日かけて殺菌処理をするのです。でもそうすると、菌は減るけど、牡蠣の旨味も減ってしまう。

シノブ
そうなのですね…。

長野さん
生食のむき身のパックの方は、牡蠣の殻から剥いたあと、塩素を入れた海水と一緒にパックして殺菌するものが多いのですが、牡蠣はパックに入れられてもまだ生きてるんです。だから、中の塩素入りの海水を牡蠣は吸い込んで、どうも、ふやけたような、間の抜けた味になっちゃうような気がします。

シノブ
そうなのですね。加熱用の牡蠣は、どういう処理が施されるのですか?

長野
加熱用の牡蠣は浄化処理をしてないです。殻から剥いて、そのまま。

シノブ
なるほど、そうなのですね。牡蠣の生食用と加熱用って、鮮度や品質の違いなのかと思っていたのですが、浄化や殺菌をしているかしていないかの違い、なのですね。

長野さん
一概にすべてがそうというわけではないです。鮮度の落ちた生食用の牡蠣を加熱用にまわして出す店などもあるみたいなので、加熱用の牡蠣すべてが鮮度がいいとは言い切れない。

シノブ
ということは、信頼のおけるお店で買うのが良いですね。来春、そういう牡蠣を探して食べてみます!

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編集者/ライター。東京・下町生まれ。旅と町歩きとカメラが趣味。人生最後の晩餐はお寿司と決めている魚好き。