魚河岸ウォーカー編集部のそういちろうです。こんちわ。
築地市場(今は豊洲市場)で働いております。仕事がら仲間のマグロ屋さんから、マグロをいただきます。
マグロのサクの状態でもらい刺身にして食べるのですが、問題は残ってしまったマグロ・・・
結構ありますよね、お刺身を残してしまうこと。翌日に残ったマグロをそのまま食べるよりは、少しアレンジして味を変えて食べたい!
以前に、見よう見まねで残ったお刺身を漬け丼にするレシピを書きました。
今回は、本格的にマグロの漬けを調べるために築地にある老舗のお寿司さんへ取材に伺うことに・・。
晴れ渡る快晴の日に、お目当てのお寿司屋さんを目指します。場所はあの築地本願寺の目の前です。
しかし、いつ見ても築地本願寺の一風変わった建築様式に目を奪われます。インド風にした近代建築の傑作だそうです。
この築地本願寺の入り口を背にして新大橋通りの向こう側に、鮨 竹若があります。
築地に数あるお寿司屋さんの中で、私にとって最も通いやすい良店です。
美味しいお寿司屋さんですので常連さんが多いですが、初めてのお客さんも気兼ねなくお寿司を食べに来られるお店です。
いつもお世話になってます、親方の松井さんです。
私の無理な取材にも、快く応じてくれました。あざーっす。
気兼ねなくお店に来られるのは、ひとえに親方の人柄にあります。(しかめっ面した怖そうなお寿司屋って苦手なんですよね)
さて早速、親方にマグロの漬け用の煮きり醤油の作り方を聞きます。
まず、材料。
煮きり醤油を作るときには、醤油(濃口)・本みりん・料理用清酒を用意する。
醤油は濃い口を使用します。マグロの漬けの場合、薄口醤油は塩分が強すぎるため使いません。
また、みりんは本みりんを使ったほうがいいです。本みりんに似ているみりん風調味料は、糖分が高く煮きり醤油を作ったときに甘すぎることがあるからです。
煮切り醤油の作り方
1. 使用する比率は、醤油(6):本みりん(1):料理用清酒(1)
2. 本みりんと清酒を鍋に注いで加熱します。
3. 沸騰させてアルコールを飛ばします。
4. アルコールを飛ばしたら火をとめてから、醤油を入れて再度火を付けます。
5. 沸騰する直前に火を止め、冷ましてから使います。(醤油の風味を飛ばさないため)
※鰹節を入れて(土佐醤油)煮きり醤油を作る店もあるそうですが、松井さんは繊細なマグロの味を邪魔しないようにと、鰹節は使わないそうです。
と、煮きり醤油の作り方を聞きましたが、特別に変わったところはありません。
一般の家庭にもある3種類の材料のみで、マグロの漬け用の煮きり醤油を簡単に作ることができます。
なれてくれば、ものの10分もかかりません。
お寿司屋さんで作るマグロの漬けは、お刺身状態ではなくサクの状態から漬けます。マグロが塩っぱくなることを特に気にしているようです。
写真のマグロは、今が旬(取材時は10月の秋)生のバチマグロです。生のマグロだけあってしっとりした質感で、脂もよくのっています。
マグロはサクのままお湯にくぐらせて表面が茶色くなったら、氷水に入れます。
すぐに氷水にマグロを入れるのは、それ以上サクに熱が入らないようにするため。
竹若では、80度のお湯にマグロのサクを30秒つけるそうです。
湯引きしたマグロのサクを、冷ました煮きり醤油に漬けます。マグロを湯引きして表面を固め、醤油が染み込まないようにしていますね。
マグロを煮きり醤油に漬ける時間は、約4-5時間ほどだそうです。漬ける時間は、マグロの種類や味の好みにより調節します。
例えば、ミナミマグロ(インドマグロ)は漬けすぎると固くなるそうです。
種類によって漬けの時間を変えるというのは、初めて聞きました。職人の経験ですね。すごいです。
湯引きした表面に、ほどよく煮きり醤油が染み込んでいます。
マグロの断面はこんな感じです。加熱して白くさせる部分が薄いのが分かりますか?
マグロの旨さを感じてもらうには、このくらいがよいそうです。
このマグロのサクから、絶品のマグロの漬けを握ってもらいました。
握ってもらった、マグロの漬け握りです。
まぁ、なんというか旨いのは当然ですが、造形の美がいいですねぇ。
パクリ。
見たとおりまったく塩っぱくなく、マグロの旨さを邪魔しないです。
お寿司屋さんのマグロは元々が美味しいため、漬けを軽くするのがよいようですね。
マグロの漬け握りを堪能している私に、松井さんのこの笑み。
メニューにはのせてないけど、マグロの漬け(おつまみ)っていうのがあるよッ。やってあげようか?
という、願ってもない親方のお言葉。ありがてぇ、ありがてぇ。
まず、マグロの切り身を用意。食べ残してしまった、マグロのお刺身でOK!
もし本わさびを手に入れられるのであるなら、ぜひ使ってくださいとのこと。
確かに擦っているときから、わさびの香りが尋常じゃありません。
擦った本わさびを、マグロの切り身に合わせます。
写真のように、マグロと本わさびに煮きり醤油を垂らします。(お寿司屋さんには煮きり醤油が入った容器があるんですね・・)
煮きり醤油を垂らして、マグロとわさびを絡めます。
はい、完成!
爆速でマグロのお刺身の残りが、しゃれたマグロの漬けに大変身。最初に鼻に抜けるわさびの香り。その後、煮きり醤油で味付けされたマグロの旨味がやってきます。
家庭でも一度作った煮きり醤油を小さな容器で保管しておけば、簡単にマグロ漬けが作れます。
さて、実は今回はもう一つのテーマがありました。
マグロの漬けタレを麺つゆとごま油で作る人がいるとの情報があり、スーパーで買った定番の麺つゆとごま油を持参しました。
果たして、築地のお寿司屋さんは麺つゆとごま油の漬けを知っていたでしょうか??
写真が回答です。(笑)
「えー、麺つゆとごま油でマグロを漬けにするの?」という親方に、無理を承知で作ってもらいました。
まずは、麺つゆといえば桃屋!をボールに注ぎます。ドボドボ。
次にごま油を投下。寿司屋のカウンターで、まさかのごま油の香りが漂います。
仕込みに忙しい他の職人さんも集まってきましたが、どなたもこの漬けタレの作り方をご存知ないようです。
さっきのマグロを桃屋のマグロの漬けタレに漬けます。やっぱりごま油の香りが香り立ちます。
桃屋の漬けタレ(ごま油バージョン)に数秒マグロをくぐらせてから、マグロをキッチンペーパーにとります。
「あー、分かった!これポキだね。」と唐突に声をあげる親方。
なんすかソレ?という私の問いに、ハワイ料理でマグロにごま油をかけるものがあるよとニッコリ。
ハワイでは意外にもマグロが揚がるそうですが、南方の暖かい海のマグロなので脂のりがイマイチ。
そこで、マグロにごま油などの油を足すことによって、美味しく食べる料理だそうです。
ごまをパラパラっとして、マグロの漬け(ポキ)完成。これまた簡単にできました。
漬けた時間、数秒。
二人でこのマグロポキを食べて、「うん、ありだな・・」(笑)
マグロの漬けって簡単に作れる!これに尽きますね。
皆さんも、マグロのお刺身が残ってしまったら漬けに挑戦してみてください。
マグロは日がたつと変色してしまいますが、漬けならそんなマグロの色も気になりません。
マグロの漬けのアレンジレシピとして、麺つゆとごま油と使用したマグロポキ用の漬けタレも、ちょっとした味のアクセントとして面白いと思います。