このページでは、下記の二通りの解凍方法を案内しています。お急ぎの方は各解凍法に直接とんでください。
築地の魚屋になって数年が経ち、マグロの良し悪しも分かってきた頃のとある年末、家族のお正月用にと極上の天然ミナミマグロ(インドマグロ)中トロを実家に送っておきました(冷凍便)。
天然モノでありながらたっぷりと脂ののったその身質。このマグロなら間違いないっ!
今まで両親が食べたことのない最高のマグロを食べさせてやろう、そんな素敵な天然極上ミナミマグロ中トロです。
年末の壮絶な築地の仕事を乗り越え、疲れた体を引きずりながらやっと実家へと帰省。
テレビに流れる紅白をボーっと眺めている脇で、おふくろがせっせと年末仕様の豪華料理をセッティングー。
あの天然極上ミナミマグロ中トロも解凍され、刺身になって食卓を飾っています。
さて食事が始まってからあの天然極上ミナミマグロ中トロに箸を伸ばします。
心のなかでは、(ふふふ、俺が目利きしたあの天然極上ミナミマグロ中トロの味を確認するか。旨いに違いないわい。)といった感じです。
しかし!刺身を食べた私は戦慄しました。こ、これがあの天然(略)中トロか!口に入れた刺身はゴワゴワとした食感で、しかも旨味が抜けてしまっています。
「一応、塩水で解凍したのよ」という屈託のない母の笑顔に、私は言葉を詰まらせて引き攣った笑顔を返すのみでした。
築地に戻った私は友達のマグロ仲卸や取引先の和食・寿司の板長に冷凍マグロの解凍方法を聞きまわりましたが、驚くべきことにそれぞれが自信を持って教えてくれるマグロの解凍方法が違うのです。
ある人は水道水でいいからマグロがぐにゃんぐにゃんになるまで解凍しろとか、またある人はバブルが吹き出すお手製のマグロ解凍器を使用して解凍していたり。
なかには一度解凍したマグロをまた冷凍して、また解凍するというトンデモ解凍法を開陳する料理人も。
(それは違うでしょ、とは言えなかった私・・・)
マグロの解凍方法に困っていた私がたまたま出席した水産系のイベントで「日本かつお・まぐろ漁業協同組合」の方から氷水解凍法のパンフレットをいただきました。
これは使える!そう直感しました。
冷凍マグロの氷水解凍とは、マグロを-3度~0度(氷温)の温度帯で解凍する方法です。
実は凍ったマグロは0度の手前、-2度付近で溶け始めます。必要以上に解凍時の温度をあげないようにして、マグロの細胞を傷つけないようにします。
細胞を傷つけてしまうとドリップとともに旨味が流れだしてしまうからです。
この氷水解凍法はマグロのみならず、他の冷凍食品の解凍全てに応用できます。
ボールに粗塩と水道水で塩水を作ります。塩は精製塩より粗塩の方がよいですが、なければ精製塩でもかまいません。
海水より少し薄い程度のしょっぱさにしてください。ボールの塩水でマグロの柵に付いている切り粉クズを良く洗い流します。
塩水でマグロの柵を洗うのは、解凍されたマグロが少し塩っぱい位が旨味を感じやすいためです。
塩水の濃度は解凍されたときの塩っぱさになりますので、あまり濃いのはおすすめしません。
マグロの柵を塩水で洗い終わったら、キッチンペーパーなどで柵に付いている水滴をよく拭いてください。
ジップロックなどの密閉できる袋の中に、マグロの柵をそのまま入れてください。マグロにラップをする必要はありません。また、必ず密閉できる袋を使用してください。マグロの柵を入れる際に、袋からなるべく空気を押し出してください。
ボールに氷水をタップリと用意し、その中に袋を沈ませます。袋が浮いてしまうようなら、重しをのせて袋が氷水の中に沈むようにします。
時間がたつと袋に氷の膜が張るので手ではがします。柵の大きさにもよりますが、1時間程度でマグロが解凍されます。
解凍されたマグロを袋から出しますて、キッチンペーパーでマグロの水分を拭いてください。
次に新しいキッチンペーパーをマグロに巻き、お皿にのせて軽くラップし冷蔵庫で半日から1日寝かせます。
ラップするのは冷蔵庫内でマグロが乾燥するのを防ぐためです。寝かせることによりマグロの身が熟成し旨味が増します。
(寝かせすぎるとマグロの色が黒くなるので注意)
冷凍技術が発達した現在、しばしば冷凍マグロを解凍したときに身が縮れます。
(マグロの縮れとは)縮れが発生した場合解凍したマグロをすぐに食べると、身はゴワゴワとして固くかつ未成熟ですので旨味が少ないです。
ただし素人の方が解凍時にマグロが縮れてるかどうかを見分けるのは難しいので、解凍したマグロを半日から1日寝かせるのを私はオススメします。
食べる時間から逆算して余裕を持ってマグロを解凍してください。
冷凍マグロを解凍するのに、昔から利用されてきた解凍法です。
ジップロックなどの袋がない、氷を用意していない、大量のマグロを解凍しなければならないなどの時は、この温塩水解凍法をお試しください。
塩水を使用するとマグロから旨味が流れでるのを防ぎ、赤色の発色をうながします。
氷水解凍法が面倒なので、私はよくこちらでマグロを解凍してます。(^_^;)
お風呂の温度位のぬるま湯に、粗塩を溶かして3-4%濃度(海水程度の塩っぱさ、かなりの塩っぱさです)の塩水を作ります。
マグロの柵に付いている切り粉クズを水道水でざっと洗い流し、温塩水にマグロを漬けます。
1-2分たったら温塩水からマグロの柵を取り出し、軽く水道水で洗います。
解凍後のマグロにちょっと塩気を残すのが、マグロの旨味が感じられるちょうどよい状態になります。
軽く洗わないと解凍後のマグロが塩っぱすぎますし、洗い過ぎると水っぽい味になってしまいます。「ざっと流す」程度です。
ざっと洗ったマグロの柵に付いた水滴を、キッチンペーパーなどで丁寧に拭き取ります。
柵をキッチンペーパーなどで巻いてお皿の上に並べます。お皿ごと軽くラップして冷蔵庫内に入れます。
半日から1日程度マグロを寝かして熟成させます。寝かせることによりマグロの旨味を引き出します。
(寝かせすぎるとマグロの色が黒くなりますので注意)
マグロの縮れについては氷水解凍法と同様で、解凍したマグロを半日から1日寝かせるのを私はオススメします。
食べる時間から逆算して余裕を持ってマグロを解凍してください。
厳密に言えば、マグロは種類や魚体の大きさや鮮度(釣り方)、部位によって一柵ごとに解凍時間などの手順が変わります。
プロのマグロ屋や料理人たちは、冷凍されたマグロの状態をみながら手をかけて解凍しています。
一般の方が冷凍されたマグロの状態を見極めるの至難の技ですので、まずは上記2つの方法のどちらかをお試しください。
何度も経験を積みますと塩水の濃度や寝かせる時間も分かってきて、次はこうしてみようなどのアイデアも浮かびます。
コツは余裕を持ってマグロを解凍することです。どうしても食べる直前に慌てて解凍すると失敗していまします。
これであなたもマグロ解凍職人になれますよ!
築地魚群では、旨い!マグロを販売しています。
(画像をクリックでお店へ)