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魚河岸を影で支える容器業の仕事 その2

魚を入れる発泡スチロールのケース、プラスチックの樽、青紙に保鮮紙、蝋引き袋、ガムテープにダンボールまで、魚を包装するものは何でも揃える東京空器。今回は発泡スチロールのケース、通称「発泡」にスポットを当てていきます。

  

市場で欠かせない「発泡」

豊洲市場で発泡を扱う東京空器。7街区の奥のリサイクル・廃棄物集積所のあるエリアに倉庫を構えています。

戦後間もなく創業した東京空器はの倉庫には、お客様のリクエストに応えるべく多種多様な発泡を取り揃えています。

発泡が山積みの倉庫で、東京空器に勤めて50年になる石井さんにお話をうかがいました。

 

 

シノブ
石井さんは、これだけの数の発泡を、どのサイズの発泡が、どこにある、という位置関係は把握されているんですか?

石井さん
だいたいわかってるかなあ。メーカーごとに並べているから。

シノブ
すごいなあ、これだけの数のものを把握されてるとは。この真っ白な発泡の山を目の前にして、種類を見分けられるのは、長年やってるからこそ、ですね。あそこにある文字やシールが貼ってある発泡はなんですか?

石井さん
あれは、一度使った発泡の傷みが少ないものを集積所から集めてきて、荷受(卸売業者)さんなどに譲ってリサイクルしているんだよ。 貝のように、直接食べる部分には触れないものを一時保管しておくのに使ったりしてるね。

 

 

シノブ
そういう需要もあるんですね。たしかに、一度使って廃棄するのはもったいない、発泡は穴が開いてなかったりすれば再利用できますもんね。仲卸さんでも、お店で一時的に鮮魚を入れる容器として発泡を使っていたりしますよね。

石井さん
帳場で、発泡にお弁当や飲み物を入れたり、帳簿、電話を入れたりなんかして使ったりもしてるよね(笑)

シノブ
見ます、見ます(笑)。場内でものすごい数の発泡を見かけるのに、ここにもこれだけの新品の発泡があるのは、なんだか不思議な感じがします。

石井さん
どういうところで不思議な感じがします?

シノブ
あれだけの数の発泡があるから、場内で使っている発泡を再利用して、それを繰り返して回したら、新品の発泡がこんなに必要あるのかなって。新品の発泡を仲卸さんたちはどのような時に使うんですか?

石井さん
気心の知れたお客さんだったら、リサイクル発泡に鮮魚を入れてお渡しすることもできるかもしれないけど、通販や馴染みのないお客さんだったら、そうもいかないでしょう?衛生面で気を使うお客さんも増えてきているから。

シノブ
なるほど、たしかに、そうですね。

石井さん
欲しいサイズが決まっている仲卸さんもいらっしゃる。自分のところで扱う魚に合った最適なサイズだったり、ずっと使っていて、使い慣れたのが欲しいというところとかね。そういうところは、新しい発泡が必要になるでしょう。

 

 

シノブ
海外の業者さんの需要もありますか?

石井さん
最近はすごく多いよ。今日も中国の業者さんが300個、持っていったよ。

シノブ
へーー300個ですか!?

石井さん
ここで朝、魚を仕入れて、梱包して飛行機に乗せれば、その日の夕方には中国に着くでしょ。クールで空輸できる大きめの箱は、海外の業者さんがよく持って行くよ。

シノブ
なるほど、そういう需要もあるあんですね。

石井さん
それと、大卸さんも、産地から届いた魚は、発泡に地名やロゴが入っているから、そのままそれを使うわけにはいかない。だから新品の発泡が必要になってくる。

シノブ
新品の発泡に整理して入れて、各地の市場に発送するんですね。

 

 

石井さん
そうそう。それと、まだ確定していないことだけど、豊洲では、衛生面の観点から、新品の発泡しか使えなくなるかもしれないっていう話も聞きますよ。

シノブ
発泡の再利用が今後、禁止になるかも、ということなんですね。ここの向かいにリサイクル施設がありますよね。

石井さん
向かいの施設で、発泡スチロールを顆粒状にして、マレーシアや中国などへ輸出してるみたい。

シノブ
なるほど、向かいではそういう処理作業がされているんですね。新聞で読みましたが、豊洲市場はリサイクルに積極的に取り組んでいて、毎日8トンを再資源化処理しているとか。

石井さん
ゴミ集積所も、区画ごとに設けられてね。築地にあった“発泡の山”を見なくなったでしょう?

シノブ
たしかに、あの山積みになった発泡、なくなりましたね。ここまで歩いてくる間だけでも、2ヶ所で発泡の集積場を見かけました。

石井さん
うちも長いこと、魚河岸でやらせていただいてるけど、木箱から発泡に変わって、今度また築地から、豊洲に来て、いろいろ変わったよ。

魚河岸になくてはならない発泡。その変遷を追いかけてみると、市場の歴史が見えてきそうです。次回は、発泡の歴史を紐解いていきたいと思います。

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