たくさんの種類がある魚たち。その中でも、同じ魚でありながら、その時々によって名前が変わる魚たちがいます。「出世魚」と呼ばれる魚をご存知でしょうか。
名前が変わる要因は様々。大きさや外見の違いによって変えるのが基本ですが、地方によって名前が変わることもあります。
「いちいち違う名前を同じ魚につけるなんて意味あるの?」
そう思われる人もいるかもしれません。
しかし名前を変えることは、その魚において必要なことでもあるのです。
例えばブリ。
出世魚の代表格ともいえるこの魚は、関西においては、
ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ
と名前が変わります。ハマチはブリの若いころの名前だったんですね。
名前が付けられるタイミングは、ハマチとブリでは、当然値段も扱いも変わってきます。
このように、大きさや外見だけでなく、身の味や扱いなども変わってくるのが出世魚の特徴。商品として異なるのですから、名前が変わった方が便利ですよね。
また、漁師さんの間では、その魚の年齢と大きさを区別するのに役立ちます。
成長の早い魚類は、一年で体の大きさが一回り以上大きくなります。そのため、同じ時期にとれた魚でも、年齢によって大きさが全然違うなんてことは当たり前。
そこで、「大きいブリと小さいブリ」なんて呼ぶよりは「ハマチとブリ」と呼んだ方が、その大きさの違いがすぐに分かります。名前を区別することには、こういった利便性もあるのですね。
では、名前の変わる魚に、どうして「出世魚」という名前が付いたのでしょうか。
実は日本では、江戸時代まで、武士や学者が元服の際や出世をした際に、名前を変える習慣がありました。出世魚も同じく、大きくなるにつれて名前が変わっていく魚。
そのため、「武士のように、成長に伴って出世するように名前が変わる魚」ということで、出世魚と呼ばれるようになったのです。
では、出世魚には、どんな種類があるのでしょうか?
とくに有名な3つの出世魚を紹介します。
出世魚の中でももっとも有名な魚です。
最大で13キロまで成長する例もある大きな魚で、『経魚(フリウオ)』、つまり年を経た魚から由来が来ているといわれています。
主に関東では、
ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ
の順に呼ばれています。
また九州では、ブリの先に、さらにオオウオという名前があります。
先に例に出したハマチの呼び名は、関西での呼び方で、関東では呼ばれていません。
ただ、関西からやってきた養殖物のハマチを、イナダではなくそのままハマチと呼んだことから、関東では「ハマチは養殖、イナダは天然」と区別されているようです。
関東で買い物をするときには、気を付けておきたいですね。
秋の季語でもあるスズキは、血合いがほとんどない、きれいな白身をしています。
名前の由来には、「すすぎ洗いしたようなきれいな身」ということから、「すすぎ→スズキ」となった説もあるほど。
有名な呼び名としては、
セイゴ → フッコ → スズキ → オオタロウ
になります。
東海や関西では、セイゴとスズキは一緒ですが、その間のフッコの呼び方が異なり、
関西:セイゴ → ハネ → スズキ
東海:セイゴ → マダカ → スズキ
という呼び方になります。
旅行などの際には、覚えておくといいかもしれません。
腹太(ハラブト)とも呼ばれ、太腹(ほはら)あるいは含腹(ほほはら)など、ブリと同じくその大きさから名前が来ていると呼ばれるボラ。
ボラより大きいトドになると、80センチほどにもなり、これ以上大きくならないことから「とどのつまり」の「とど」の語源ともいわれています。
代表的な呼び名としては、
オボコ → スバシリ → イナ → ボラ → トド
となります。地方によっては、もう一段回挟んで6つの名前があるところも。
その名前の縁起の良さから、めでたい日やお祝いの席に引っ張りだこの出世魚。
紹介した知識で改めて見てみると、一層の魅力に気付けるかもしれません。
料理で出てきたときには、ぜひ知らない方にも教えてあげてください!