世界を代表する日本の和食。そんな和食に欠かせないのが出汁です。
うす味の繊細な味わいが多い和食は出汁によって決まるといっても過言ではありません。
そんな出汁を取るうえでメジャーなかつお節は和食を支える屋台骨といっていいでしょう。
今回はそんなかつお節の知られざる製造方法を紹介していきたいと思います。
近頃では、かつお節と聞くと、すでに削られてパックに詰められているものを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。かつお節は世界一固い食べ物といわれ、木片のようなかつお節をかんなで削りだして料理に活用します。
名前からカツオが原料だということは想像がつきますが、どのような工程を経てカツオはかつお節になるのでしょうか。
かつお節の味を左右する最も重要な要素はカツオの品質です。水揚げされたカツオは近海ものは氷水で保存、遠洋でとれたものは低温で急速冷凍し、持ち帰られます。
大きさや鮮度、脂の乗りなどを判断し鰹節に最適なものを選別します。
大きさに応じて本節、本枯節、亀節などに分けられ、あまりにも大きなものは乾燥させることが困難になるので使用されません。また、生食と異なり脂の多いものはかつお節に不向きとされています。
冷凍されて輸送されてきたカツオは加工の前に解凍を行います。
解凍は水をはった水槽につけて行い、何度か水を変えながら丸一日がかりで行います。
カツオの頭を落とし内臓を取り除き、水洗いをしたのちに3枚に下ろします。この際に脂肪分の多い余計な肉を落とす場合もあります。
下ろした身を血合いの部分を境に腹側と背側に切り分け、この切り分けた身のうち、背中側の半分を「雄節」、腹の部分は「雌節」と呼ばれます。
通常は1尾のカツオから4本のかつお節が作られる計算です。
生切りを行ったカツオの身を「煮籠」と呼ばれる熱通りの良い金属製の籠に並べていきます。この際に曲がったり、ねじれて並べてしまうと形が崩れたるなど出来上がりが悪くなってしまうため慎重さが求められる作業です。
「しゃくじゅく」と呼ばれる作業です。殺菌、たんぱく質の変性、脂肪分の除去を目的に行う作業で、籠立てを行った煮籠を8~10個重ねて最初は75℃~80℃の温度の湯につけ身割れをしないように煮ます。
徐々に湯の温度を上げ95℃~98℃で2時間ほど煮込みます。泡が立ち身が崩れやすくなってしまうため湯の温度を100℃にはしません。
煮終えたカツオを風通しの良い場所で1時間ほど風にさらし身を引き締めます。この段階のものを「なまり節」と呼びます。
水を張った「骨抜きたらい」という水槽にカツオを入れて骨抜きをします。
煮終えてまだやわらかい段階なので身を崩さないように手早く毛抜きを使って行います。
骨抜きをした段階でカツオの身には68%の水分が含まれているといわれており保存性は低い状態です。
この水分をとばすために煙でいぶすことを焙乾といい、一般的にはクヌギやブナ、サクラ、カシといった広葉樹のを乾燥させた薪を使用します。この焙乾は水分をとばす、抗菌という効果のほかに「香りづけ」や「たんぱく質の分解」といった目的もあります。
焙乾は繰り返し行われ、回数に応じて「一番火」「二番火」と数えられますが、最初に行う「一番火」のことを「水抜き焙乾」と特別に呼びます。
一番火の後にのみ整形という作業を行います。
整形は身がかけたり傷がついていると後に身割れを起こしてしまうので修復を行います。
カツオを卸した際に骨に付着した肉を集めカツオの身とともに煮熟し、生の身と混ぜたものを使い修復を行っていきます。
二番火以降を間歇焙乾といいます。水分を取る焙乾と夜のあいだ火を止めて水分を均等にするあん蒸を繰り返し種類によって異なりますが6~15回ほど繰り返します。
最終的に水分が28%ほどになり煙のタールに覆われて黒くざらざらした「荒節」となります。
荒節を半日ほど日に当てて乾かし表面にカビが生えやすいようにタールや脂肪分を削ります。この状態を「裸節」と呼びます。
裸節を2日ほど天日で乾燥したのち温度や湿度を管理している部屋で鰹節カビをカビ付けしていきます。
季節によりカビがつく日数は変わりますが2週間ほどカビが付き、最初についたカビを「一番カビ」と呼びます。カビがついたらブラシなどで払い落し、天日で干したのち再度カビ付けを行い完成となります。
カビ付けを行うことでたんぱく質が分解されうまみが際立ち、脂肪を分解し水溶性に代わるため透き通るきれいな出汁が取れるようになります。
かつお節からとった出汁が豊かな味わいを持つ秘密は長い時間をかけて作ることにありました。
ぜひ、この手間ひまのかかった深い味わいを試してみてください。